患者さんの療養と地域社会を支える先進モデルを目指す特任副院長 尾藤誠司
地域の皆さま、そして日々患者さんと向き合う職員の皆さまに心から感謝申し上げます。70周年という節目は、私たちが「次の10年をどう設計するか」を具体的に語る絶好の機会です。世界が注目する超高齢社会・日本において、総人口の10%が80歳以上となった現在、「特定の病気を専門的に治療する」という従来の医療モデルだけでは、人々の健康な暮らしを支えるには限界が大きいと私は 考えます。
必要なのは、医療サービスそのものを病気の診断・治療を幹とした従来の「医療モデル」から、当事者の幸福な生活を支える重要な資源として健康を位置づけ、それを支える「生活支援モデル」へとシフトさせ、疾患予防から介護支援までを俯瞰しながら、十分なケア資源を連携させることです。これこそが最先端の医療サービスの姿であり、当院がめざすコミュニティ・ホスピタルの核心でもあります。
私は昨年まで20年以上、高度急性期病院に勤務してきました。しかし、その構造の中では包括的でフレキシブルな連携を実現することに大きな限界を感じていました。昨春、野村病院に入職して驚いたのは、予防医学センター・外来・救急・急性期・回復期・緩和ケアが一つの施設に集約され、さらに訪問看護ステーションや地域包括支援センターとダイレクトにつながる構造です。この“ワンキャンパス”は、これからの超高齢社会で医療/ケア提供する上で比類なき強みです。当院の基本理念「医療の前に人あり」は、そうした構想を支える価値観を端的に表現しています。
この1年、病棟や外来で職員の皆さんとかかわる中で、お互いの価値観を尊重し協同する姿勢の素晴らしさに触れてきました。看護・医療・予防・リハ・介護・生活支援など多様なサービス要素を、組織構造と提供プロセスの双方で統合することが、今後のサービス品質を左右すると私は考えます。そのためには、患者さんの健康情報や生活環境、経時的データを「生活の軸」に沿って共有できる情報基盤が不可欠です。また、患者さんや近隣住民の健康課題をめぐり、多職種が異なる視点を持ちながらも最善策を共に検討する場を増やすことが極めて重要です。まさに当院が担うべき「三鷹市地域の健康プラットフォーム」の役割です。
こうした取り組みを象徴するのが、私が外部顧問時代から関与してきた多職種での事例検討会です。2025年度から「三鷹まるっとカンファレンス」と名称を改めました。病院各部門に加え、包括支援センター・訪問看護ステーション・連携医療機関のスタッフのみなさまが集い、当事者や家族を取り巻く生活上の困りごとまで「まるっと」見つ
めながら最良のやりくりを探る場です。病気や障害のみならず、感情や社会的役割まで共有し合うこの実践こそ、当院の未来を照らす灯台となるでしょう。
70周年を新たな出発点とし、野村病院は患者さんの暮らしと地域社会を支える先進モデルへ進化し続けます。皆さまの変わらぬご理解とご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。
※『地域と共に歩む野村病院』-創立70周年の先を目指して-からの転載